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2024/04/09

珈琲の文化を道具の面から支える|河野雅信

珈琲サイフオン株式会社 代表取締役社長

珈琲サイフオン株式会社 代表取締役社長 河野雅信さん

1957年、東京生まれ。1925年に創業し、世界で初めて「コーヒーサイフォン」や「円錐フィルター」を発明した珈琲サイフオン株式会社の3代目社長。上手な珈琲の淹れ方を伝えるセミナー「コーノ式珈琲塾」を27年間継続中。教え子は日本、韓国、中国、台湾で約1万人の教え子がいる。2025年に創業100年を控え、現在「ジャパンコーヒーフェスティバルin文京区」を企画中。

世界に先駆けてコーヒーサイフォンを開発

今の仕事をはじめられたきっかけを教えてください。

祖父が、世界で初めてガラス製コーヒー器具を発明し「コーヒーサイフォン」と名付けた河野彬だったこともあり、生まれた時から珈琲に囲まれた生活でしたね。中学生の時に、現在の社屋となる第2営業所が千石に建てられました。その後は「親の仕事を継ぐのが当たり前」と考える祖母から、開発当時の話を聞くなど、しっかり刷り込み教育を受けました。大学生のころには、祖父の作った「サイフォン」の偉大さにすっかり魅了され、必然的にこの仕事に関わりたいと考えるようになっていましたね。大学卒業後、まずは珈琲について周辺事情を学ぶため、大阪の代理店で丁稚奉公をしました。当時は喫茶店ブームで、どこでもいくらでも珈琲の器具が売れていましたね。その後、1998年に珈琲サイフオン株式会社の代表に就任しました。近年は、喫茶店がどんどん閉店しているため、昔ほどの勢いはありませんが、引き続き全国で弊社の器具を使っていただいております。最近は、手軽に珈琲を入れられる全自動コーヒーマシンなどもありますが「黒い色のお湯は出るけれど、美味しい珈琲は出てこない!」と言って、弊社の製品を長年愛用されている喫茶店もあります。非常に嬉しいですね。

仕事の特徴は、どのような点にありますか?

弊社の「コーヒーサイフォン」「円錐フィルター」は、弊社の唯一無二の特徴です。国内はもちろん、韓国や中国、台湾、オーストラリア、ドイツ、フランスなどの海外からも問い合わせがあり、買いに来てもらっていますね。みなさん「“KONO”が欲しい!」と言ってくれるのが本当に嬉しいです。「円錐フィルター」も、発売から少しずつ改良を重ねつつ、新作を作り続けています。円錐フィルターは、特許が切れたタイミングで、多くのメーカーが真似をして製品を開発しました。しかし、美味しい珈琲を入れるために大切な、珈琲の落ちるスピードを抑える構造まで真似している製品はありませんね。さらに大切なのは道具だけでなく、その道具の「使い方」だと考えています。珈琲を上手に入れる秘訣は、道具を使いこなすこと。円錐フィルターであれば、器具の構造を理解して、時間をかけて淹れることを意識するだけで、味がずいぶん変わりますよ。こうした器具の正しい使い方と、上手な珈琲の淹れ方を伝えるセミナー「コーノ式珈琲塾」を、もう27年続けています。喫茶店のオーナーはもちろん、これから珈琲屋さんを始めたい人や、美味しい珈琲を飲みたい個人の方まで、国内・海外で1万人以上に教えてきましたね。

珈琲の持ち味を素直に引き出す

どんなお客さまが多いですか?

「コーヒーサイフォン」や「円錐フィルター」は国内外から多くの注文をいただいています。「円錐フィルター」は、年に4回8色展開で新作を数量・期間限定で発売するのですが、おかげさまですぐに売り切れてしまいます。会社には、特別に独自の改良を加えた「焙煎機」もあります。喫茶店や珈琲屋さんから、焙煎だけしに来るということもよくありますね。セミナーの参加者には、定年後に珈琲屋さんをやりたいので、アドバイスが欲しいという方もいらっしゃいます。その際、必ず「珈琲を売る商売が好きなら良いけれど、珈琲が好きなだけならおススメしない」とお伝えしています。それは、自分の好きな味をお客さまに押し付けるのではなく、お客さまに合わせて珈琲を飲ませることができる、職人になってもらいたいから。今は少なくなりましたが、昔はそんな人が多かったものです。珈琲の文化を守るためにも、お客さまに合わせた珈琲を提供できるようになってもらいたいですね。

仕事をするうえで、心掛けていることを教えてください。

珈琲を淹れるための器具は、自社が発祥という強い想いがあります。これからも、自分たちにしか作れない製品を生み出していきたいですね。日本の珈琲の文化を支えたいという想いも強く持っています。例えばアメリカ人と日本人は胃の構造が違います。同じ珈琲を飲んでも、身体への負担や影響が異なるのです。是非、日本人の身体に合った美味しい珈琲を飲んでもらいたいですね。来年(2025年)には創業100年を迎えます。現在、全国で開催されている「ジャパンコーヒーフェスティバル」を文京区でも開催すべく企画中です。また、いずれはカフェを持ちたいですね。夜は飲食もできて、ギターライブのできるようなスペースが理想です。これからも美味しい珈琲の追及を続けていきます。

インタビュー後記

珈琲の焙煎は、豆の種類だけでなく、栽培地域、収穫時期、気温、そして飲んでもらうお客さまによって、ベストなバランスが異なるため、かなり細かい調整が必要と話す河野さん。常にお客さまのことを考え、最善を尽くす会社は来年100年目を向かえ、日本の珈琲の文化をこれからも支えていく。

お問い合わせ

名称:珈琲サイフオン株式会社
住所:東京都文京区千石4-29-13
電話:03-3946-5481

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