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2023/11/07

探究により生きる力を身につけよう|佐藤健友

探究横丁合同会社 サードプレイスクリエイター・探究プロデューサー

探究横丁合同会社 サードプレイスクリエイター・探究プロデューサー 佐藤 健友さん

1980年生まれ。品川区出身。大学卒業後、アパレル関係の会社に入社。その後、通信制大学に通い教員免許を取得し、30歳で小学校の教員となる。学級崩壊の危機などを経て、独自の魔法のほめ言葉を活用した「教えない教育」を身に着ける。生徒が主体となるこの教育手法が、渋谷区内小学校のモデル授業に選ばれ評判を得る。現在は、子どもも大人も好きなことができるサードプレイス『探究横丁』を運営。趣味はサウナ。

良いところを見つけてほめる

今の仕事をはじめられたきっかけを教えてください。

アパレル関係の会社に入社し、初めて店長を任せられたとき、アルバイトや後輩たちを、うまく導くことができず「“教育”は超難しい!」と感じ、人を育てることに強い興味を持ったことがきっかけです。26歳の時に教員を目指すことを決意。正直、周りからはかなり反対されましたね。それでも決意は固く、通信制大学に3年間通い教員免許を取得しました。30歳で念願の小学校の教壇に立ったものの、すぐに学級崩壊の危機を迎えます。怒鳴ったり、出席簿を叩きつけるなどして子どもに注意を促しては解決することができず自己嫌悪に陥る日々、隣のクラスの担任がやってきて事態を収拾してもらう始末。当時、自分にも余裕がなく、かなり視野が狭かったと思います。そんなある日、授業の間の休憩時間に、次の授業の準備を整え、おとなしく座って読書をしている一人の児童に気づきました。周りの子ども達を落ち着かせて授業に入る前、「〇〇さんは、休憩中に次の授業の準備をしていたよ。とても良いことだね。」と、全員の前で褒めたところ、次の休憩時間には、真似をして次の授業の準備をする子どもが現れました。授業に入る前にそのことを褒めると、さらに次の休憩時間には、席についている子どもが増え、気がつけばクラス全員が、休憩中に穏やかに次の授業の準備を始めるようになったのです。この出来事を受けて以来、“人の良いところを見つけてほめよう”と考えられるようになり、一気に心が楽になり視野も広がりました。その後も友達を手伝う子どもや、掃除を頑張っている子どもに、“いいね!”と声を掛けることで、生徒たちの行動はどんどん自主的で前向きに。そんな子ども達の良いところを、親御さんに報告するようになったのもこの頃です。この姿勢を授業にも取り入れ、こちらから教えることなく、生徒の良さを引き出す授業“教えない理科”では、独自のほめ言葉を使った授業スタイルも注目され『渋谷区小学校のモデル授業』にも選ばれ、多くの教師が見学に訪れるなど評判となりました。こうして子どもの意見を取り入れながら、学級運営をしていたある日、子どもから「理科室でクラゲを飼いたい!」とのリクエスト。早速、「いいね!面白そう!やってみようよ!」と背中を押したものの、学校のルールなどもあり実現ができない事が判明。色々と考えたものの、子どもの希望に答えられないという状況になりました。ここまで、子どもの考えを尊重し、子どもの夢や希望を叶えるために全力を尽くしていた私は、希望に全く答えられないという状況を受け入れることができず教員を退職。子どもの希望を叶えるスペースとして、地元の南品川に子どもも大人もやりたいことが好きなだけ探究できるサードプレイス『探究横丁』をオープンし、現在に至ります。もちろん、すぐにクラゲも飼い始めましたよ。

仕事の特徴は、どのような点にありますか?

『探究横丁』では放課後の時間を使って、子ども達に“探究的な学習を促す”空間を提供しています。ちなみに探究は勉強に限らず、生き物の観察や、絵を描くことなど、自分が興味を持ったことであれば何をやってもかまいません。これは、私が「好きなことをやっているときの子ども達の集中力は、本当に凄い!」と感じているため。また、子ども達には自発的に行動してもらいたいと考え、こちらからやり方や方向性を示すことはほぼありませんこれは、自分が教師時代に使っていた手法です。例えば、以前担任していたクラスでは『係』を一切決めませんでした。そうすると、子ども達の方から「教室にホコリが落ちているから、掃除の係がいた方がいいよ」と声をかけてくれます。「よく気がついたね。ではやってくれるかい?」と話し、帰りの会などで率先して係を引き受けてしてくれた子どもを、みんなの前でほめるのです。そうすることで、自発的に考え、行動を起こします。人気のある係は何人もいたり、1人で係をやったり、人数にばらつきはありましたが、みんなヤル気に満ち溢れていたので、とても良い雰囲気でしたよ。とはいえ『探究横丁』では、子どもだけではできないことも出てくるため、一緒に考えながら子どもの成長を妨げない範囲でサポートしています。

失敗を恐れずに探究し続けられる場所

どんなお子さんが多いですか?

自分のやりたいことや好きなことがハッキリしている子が多いですね。小学生~中学生まで、幅広くご利用いただいております。クラゲを飼いたいといった子も通ってくれていますよ。探究の中でぶつかる壁の一つが“お金”の問題。例えば、クラゲをもっと大きな水槽で飼いたいと考えた場合、買い替えるお金が必要になりました。一般的には、施設側で費用を負担して手配すると思うのですが、私は「じゃあ、どうやってお金を用意しようか?」と問いかけます。ちなみにこの場合は、その子が小さい頃から消しゴムハンコをつくっていて、かなり精度が高いことをヒントに「ハンコで、有名人やアニメのキャラクターを表現して紙にスタンプし、名言を書き加えてガチャガチャにして売ってみる」とアイデアが生まれました。やってみたころ大当たり。大人も子どももガチャガチャを回し、あっという間に水槽代が集まりましたね。このように好きなことを続けるために欠かせない、お金の稼ぎ方も体験できます。最近では逆転授業として、子どもが先生になって大人に教えるというイベントを開催しました。先生を経験した子どもが今度はコーチとして発表の仕方を教えて報酬を受け取り、自分の探究のために使う仕組みも考えております。

仕事をするうえで、心掛けていることを教えてください。

“夢中になって探究している姿を見守る”姿勢と、“良いところは必ずほめる”行動を徹底しています。経済産業省は今年の未来人材会議において、これからの日本人には「好きなことに夢中になる教育」が必要だと提唱しています。しかし、教育の現場ではその体制やノウハウが足りていないことが多く、実行できている学校はほとんどありません。『探究横丁』では、子どもが好きなことに夢中になって挑戦し、仮に失敗や挫折をしたとしてもそれを糧に、さらなる探究を続けられるよう、的確なほめ方により、子どもたちの自己肯定感を育んでいます。嫌々やっていることで失敗すると、気持ちが落ち込むだけですが、好きなことで失敗すると、次はどうやってみようかな?と前向きに失敗と向き合うことができます。子どもたちには、へこたれない心を養い、積極的に挑戦する人生を歩んでもらいたいですね。ちなみに、学校の授業を外れてやりたいことばかりに集中することを心配される親御さんもいますが、文部科学省が行う全国学力調査の理科は「探究的な学び」をしている子どもが解けるような作りになっています。つまりこれから必要とされるのは「探究的な学び」です。このように集中力や探究心は、他の学びにも応用されるようになります。自分の価値観や想いを原動力に探究する学び方は、是非みなさんに身につけてもらいたいですね。ご興味のある方は、お気軽に『探究横丁』を覗きにきてください。いつでも大歓迎です。

インタビュー後記

一度社会に出てから教師となった佐藤さんは、社会人経験の無い教師とは違う視野の広さと深さを持っている。決して子どものやりたいことを否定しない。ただし、積極的に手伝うこともない。あくまでも本人による自発的な行動を求め、好奇心からくる探究による学びを促している。これからの時代に本当に必要な教育はこれだ。

お問い合わせ

名前:探究横丁
住所:東京都品川区南品川2-14-14みのやビル2F
営業時間:火曜日、水曜日、土曜日11時~18時ごろ
電話:080-5283-8924

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